北村薫『ターン』


「……私,あなたの声を、ずっと聞いてきたのです。いつからか分からない。ずっと、あなたと話して来たのです。ひょっとしたら生まれた時から」

ひょっとしたら生まれる前から。



“時と人”シリーズ第2作。時間はねじれて反復する。

冒頭の銅版画の描写が鮮やかで、真っ先に思い出す。ここまで美しい描写できる人がどれだけいるだろうか。

ニーチェを思い起こさせる運命愛を感じる。繰り返しの日常に意味を見出すことで、時は再び回り始める。


そうしたちょっと露骨にすぎるテーマよりもなによりも、一編の恋愛小説として白眉だなぁと思う。

ベタベタだけどね。

それでも、最後の最後のくだりには胸を動かされる。

かけがえのない相手。交換不可能な相手。

生まれた時から聞いてきた声と呼応するその瞬間。

どれだけ幸せなことだろうか。

そして、生まれ変わりへの予感は次作と呼応する。

恋愛部分はあまりにもベタなので、もしかしたら年とともに共感できなくなるかもしれないけど。