鹿ソフトとわたくし。

本日その時に至るまで、寡聞にして鹿ソフトなるものを知らずに生きてきました。
宮島にお船で渡ったたその先に、桟橋近くのその店に、鹿ソフトはあるのです。
鹿ソフトなるものは、名前から考えるならばいったいいかなる代物であるかは、見当もつきません。
試しに、いまいったん記憶を失って、鹿ソフトという名前だけでどういったものであるかを考えるとするならば、
1 鹿がするソフトボール
2 鹿でするソフトボール
3 鹿型のゲームソフト
4 やらかい鹿
5 逆にかなり固い鹿
とまで考えて迷走していることに気づき、ようやく、ソフト、というのはソフトクリームのことではないか、と思いつくはずです。
しかし、そこまで考えたところで、鹿ソフト、と言われても、やはりこのネーミングからでは、決定打に欠ける。
抹茶ソフトなら抹茶が、マンゴーソフトならマンゴーが、紅芋タルトには紅芋がそれぞれ入っているはずです。
しからば(鹿だけに)、鹿ソフトには鹿が入っている理屈になるはずです。
鹿。
鹿のエキス。
鹿肉。
鹿の角。
どれもソフトクリームとしてはすこし異端に過ぎる、感じがする。
いや昨今の観光周りを考えるとそうした際どいものもゴーになってしまうのかもしれない。
むう。
とまぁ、長く書いてはみましたが、だいたいこういった感じになるかと思われます。
名前だけで考えるならば、それはとても得体の知れないものなのだけれど、百聞は一見に如かずとはこのことで、お店の前にいって、サンプルを見たならば、なるほど、これは鹿ソフトだと、まぁ納得する訳です。
その姿というのは、ソフトクリームはソフトクリームで普通に盛られている訳ですが、その上にトッピング的に麦チョコ。
まぁつまり鹿のアレを模した形になっておる訳です。

 彼女のNさんがそれをどうしても食べたいというので、おかしな人だ、と思いながら見ていたのですが、やはり好奇心には勝てず、一口もらうことにしました。うん、ふつう。
 ソフトクリームの柔らかな食感、そしてまろやかな甘み、その中に点在する麦チョコのカリッサクッとした歯ごたえが口の中でアクセントとなって、ともすれば単調となりがちな、ソフトクリームライフを彩ります。
 だがしかし。
 ここは宮島です。
 地面には、ほぼ麦チョコの麦チョコが麦チョコによる麦チョコのための麦チョコの麦チョコとしてころころと転がっているわけで。それが視界にどうしても入ってきて、目からよう離れんのです。
 果たしていまぼくは麦チョコを食べているのか、それとも麦チョコが隠喩している何かを食べているのか。
もしかしたら僕の味覚がおかしくて麦チョコだと思って食べているだけで、実はメタファられている何かを食べているのではないか。もしくは、洗脳されてしまっていて麦チョコと鹿が出すかわいいやつとを混同してしまっているのではないか。そうした疑惑に囚われてしまう。
そうした葛藤と戦いながらわたしは咀嚼していたのですが、Nさんは『クリームがおいしい』と何か本末転倒なことを言っていたので、この人は大丈夫かな、と思いました。
Nさんはその直前にもプランクトンのことをプラトンがね、プラトンがね、と古代の哲学者の名前と勘違いしていたので、この人はいよいよかもしれない、と恐れおののきました。
まぁたしかに、クリームもおいしい、麦チョコもおいしい。商品としておいしさの基準は十分満たしています。
ただ、ちゃぶ台をひっくり返すようなことを言うならば、それって別に兎のでもよくね。もしくは便秘の人の5日目のアレとかでもよくね。とおもいました。
だからこれは提言なのですが、ヴァリエーションを増やすためにも、鹿ソフトだけでなく、兎ソフトとか、便秘の5日目ソフトとか、もしくはかりんとうをのせて人ソフトとか、つくるともっと客が呼べるんじゃないかと思います。
ニッチを狙っていこうよ。このビジネスモデルに興味のある人は一声ぼくにかけてください。原宿の竹下通りではやらせましょう。全国の修学旅行生を一網打尽にしてやりましょう。
うんこ。