ねむれぬ。

ねむれない。もうこのまま起きていようと思うので、コーヒーをいれる。このあたりのぼやぼやした感じがとても好きだ。わたしはこの間、夜道を歩いていたら猫を見つけた。遠くでしゃがみこんでこちらを見つめていた猫。白に黒ぶちの小さな猫だった。猫だ、と思ったので、猫だ、と口に出した。夜道で一人だったので、猫を見つけて嬉しかったからだ。猫も一匹だったので、寂しかったのではないかと思う。推測に過ぎないが。人間とはいえ、暗い夜道で誰かと出会うことが出来たら嬉しいだろうか。どうなんだろう。大きいから苦手かしら。たまに怖い人間もいるし。優しい人間ばかりではないし。それでも結構長い間一匹と一人で見つめ合っていた。その時間だけがなんだか特別な感じがして、お疲れ様です、こんばんわ、と頭の中で呼びかけてみた。こんな夜中に何してるんですか。健康のためにウォーキング、それとも気晴らしですか、奇遇ですね、わたしもなんですよ。そんなふうに。じっとしてばかりもいられないので、わたしは一歩踏み出した。向こうも一歩踏み出した。少し笑顔を浮かべたような気もするし、そうでない気もする。名残惜しいけれども、お別れとしよう、と思って、にゃあ、といった。向こうもにゃあと答えた。挨拶もすんだことだし、わたしは夜道をさらに行くことにした。向こうも反対側へ足早に遠ざかっていった。さようなら。また孤独になってしまった。まぁ夜は猫の時間なので、ほかの猫にも会えるかもしれない。うす暗い街灯がわたしの影を伸ばしている。わたしから生えている影は、四つの足が妙に長くみえておかしかったので、わたしはまたにゃあと鳴いた。