授かったものを大切にしよう。

 仕事をする。北村薫『元気でいてよ、R2-D2』を読む。

元気でいてよ、R2-D2。 (角川文庫)

元気でいてよ、R2-D2。 (角川文庫)

 

 北村薫『元気でいてよ、R2−D2』の角川文庫新装版が出たので早速購入する。書き下ろしが入ってるのはずるいな。ついでに全部読み返したりする。北村神の作品はもう何度も何度も読んでいるけれど、絶対に自分には辿りつけない表現がいつもそこにはある。

人間の醜い部分と尊い部分その両方へと繊細にふれ、極端な露悪にはならず、だれのもとにもある醜悪と尊厳。理想には届かないけれど、それを受け入れながらも、それでもなお理想へと歩みを進めなくてはならない、そうしたまっすぐな姿勢が伝わってくる。

 

なにより僕がこの作品をいっとう好きなのは、まえがきの部分だ。この作品と、『盤上の敵』にあるまえがきは、悪意のない作品を多く書く北村薫の、今回は悪意がありますよ、気をつけてくださいね、という、そんなこと気にしなくてもいいじゃないかと思うくらいの配慮で、優しい眼差しを感じるのだ。

 

それにしても、あの冬の日、明るい障子の向こうに、手の届かぬ穏やかな日常を見た時の気持ちはーーー無論、子供だったから、それはこんな言葉にして言えるものではない。感情の浜に寄せる大きな波だったがーーーきっと、人生の終わり近くになっても、まだ鮮やかに思い出すことだろう。

 ーーー人はだれも、口には出さぬそういう情景を幾つか、胸のうちに抱えるものなのだろう。