好かれたいな あたしも 好かれたいな あなたにも

日食なつこ『瞼瞼』をむさぼるように聴いている。

 

瞼瞼

瞼瞼

 

 水流のロックぐうの音も出ないほどいい。


日食なつこ「水流のロック」 4th MV

 

水流のロックもいいのだけれど、『雨雲と太陽』がもう、一聴心がびんびんに震えるほどいい。ピアノとドラムだけという構成がこんなにもドラマチックになるなんて、というのは全編通してそうなんだけど、歌詞がまた最高にいい。物語性というかストーリー性の強い歌詞が多いけどその物語性と音楽が見事に調和している。

出だしのとこ

雨雲は恋をした 相手はきらきらの太陽

人気者の彼のこと いつでも遠くから見ていた

あたしが空に出たなら みんな逃げ出して隠れちゃうの

あなたがひとたび繰り出せば 誰もがわらって空を見るのに

 

好かれたいな あたしも

好かれたいな あなたにも

はい最高。もうこの1分で最高。”隠れちゃうの” ”繰り出せば”の言葉のチョイスも最高ですし、”好かれたいな あたしも”が先に来るのがもう最高。あなたに好かれたいという気持ちよりも、あなたみたいにわたしもみんなに好かれたいという気持ちがまず一番にある。ここまでが軽快なピアノと軽やかなドラムだけ、音数を絞りに絞って示されます。

雨雲は決めたんだ 少しでも彼に近づこう

雨粒スカートひらめかせ 太陽光満ちる向こうの空へ 

低気圧が広がった 彼もどこか消えてしまった

立ち尽くした彼女は やがて泣き出した

 

「あたしの恋なんていつもそうよ。

ためらい果てては逃すのよ。

所詮あたしは嫌われ あなたは好かれ

魔法はないのよ!」

 少しだけ高まるドラムの音にのせて雨雲の決心と絶望。

”雨粒スカートひらめかせ”ってすごくない?すごくないですか?

周りに誰もいなくなって誰も見るものもいない中ひとりで泣き出す雨雲。

”魔法はない”という絶望に、わたしも太陽のようになれるはずという無邪気な憧れは砕け散ってしまいます。

 

weep, weep, やまない雨に

soak,soak, 街はずぶ濡れ

どうしたんだって 顔を出した太陽が言う

「そんなに泣くなよ,rainy lady.

素敵な服が台無しさ。

僕だけじゃこの星は枯れてしまう。

君にいてほしいんだ。」

 ここの太陽のセリフがほぼピアノだけで抑えて抑えて歌われます。

”素敵な服”=”雨粒スカート” がんばった雨雲のおめかしを太陽は気づいてくれます。

僕だけじゃこの星は枯れてしまう” 存在の価値が認められます。

”君にいてほしいんだ” 雨雲への祝福の魔法。この歌の中でもっとも強く高らかに。かけあがるピアノの音。存在を望まれる言葉が歌われる。

 

 「あたしの恋なんていつもそうよ。

振り回されてばっかりよ。

だけど時にそれすら愛おしいよ。

魔法みたいだよ!」

 

魔法が起きたよ

 

雨雲と太陽が手をつないでわらった午後のこと。

誰もが空を見ていた。

大きな虹が架かった。

 同じセリフがおそらく表情を変えて、太陽に照らされたように。部分部分前よりも音を上げて歌われ、気持ちの高ぶりを抑えきれない雨雲。

”だけど時にそれすら愛おしいよ” 状況は変わっていないけれど同じ現実でも色を変えて目に映る心に浮かぶ。

” 魔法みたいだよ!”

そして最後の”誰もが空を見ていた。大きな虹が架かった”

太陽みたいになりたい、みんなに笑ってみつめてほしい。

そんな願いが魔法のように叶った。それも太陽だけでは雨雲だけではなし得なかったやり方で。

 

たまんねええええええ。

 

もうここ2日くらいで100回以上聞いてますが、超たまらなく良い。

こうしたのに弱いんだ。

自分の中にも同じような劣等感や羨望や諦めがあって、好かれる人になりたくて。愛される人になりたくて。

『逃げ恥』4話の平匡の「いいなぁ 愛される人は いいなぁ」も心がえぐられるようだった。

自分程度の人間が、好かれるためには愛されるためには、もっともっと努力しないと気を使わないと。

自分程度の人間がしゃべることなんて、そんなに価値がないんだから、もっともっと 知識をつけないと教養をつけないと。

 

そうじゃないと嫌われてしまう。

そうじゃないと興味をもってもらえなくなってしまう。

 

ずっとそう思ってきた。

その結果好かれたとしても、それはわたしの中で条件付きの愛情で、無条件にわたしを受け入れてくれるものではなくて。

だから疲れてしまって。

そうやってずっともがいて生きてきて、すごく苦しかった。

いわゆる「自尊感情」の低い人間は生きづらい。

それを助けてくれるのは、ほとんどの場合恋愛しかない。

無条件に自分を認めてくれる人。心底からそれを信じられる人。

それこそみくりや太陽のように、力強く笑顔で現実の色をモノクロからカラーへと変えてくれる人。

そうした人と出会えて、それまで足りなかった愛情と自尊心を満たしてくれて初めて、現実をありのままに受け入れられるようになる。

でもそれって相手にとっては地獄のようで、注いでも注いでも芽の出ない鉢植えにずっと水を遣り続けるような拷問で。それに耐えられる人はいなくて。

だからますます、自己評価が低くなる。恋愛トラウマが増えていく。社会がいやになっていく。

それでも一人で生きていくには、世の中は寒すぎるから。

 

いつかきっとあなたにとっての太陽が現れるよって、この歌は教えてくれるような気がする。